ディーゼルトラックをEVトラックに改造する?普及率についても解説

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監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

環境問題への関心が高まる中、トラック輸送業界でも電動化の動きが加速しています。その中でも注目を集めているのが、既存のディーゼルトラックをEV(電動)トラックに改造するというアプローチです。本記事では、EV改造の仕組みやメリット、現在の普及率、今後の課題について詳しく解説します。

ディーゼルトラックのEV改造とは?

改造の基本構造とプロセス

ディーゼルトラックのEV化とは、既存の内燃機関を取り外し、モーターやバッテリーパックに置き換える改造のことを指します。新車を購入するよりもコストを抑えてEV化を実現できる手段として注目されています。

項目内容
改造対象車両主に中型から大型のディーゼルトラック
主な作業内容エンジンと燃料タンクの取り外し、モーター・インバータ・電池の搭載
必要なパーツバッテリーユニット、制御装置、冷却装置など
所要時間数日から1週間程度(車両と仕様による)

既存車両のフレームを流用するため、コスト面や環境負荷の面で一定のメリットがあります。


改造EVトラックのメリット

1. 車両購入コストの削減

新型EVトラックは高額ですが、改造であれば既存車両を活かせるため、初期投資を抑えることが可能です。

2. 廃車車両の再利用による環境配慮

役目を終えたディーゼルトラックを再活用することで、廃棄物の削減と環境への負担軽減に貢献できます。

3. 充電やメンテナンスコストの低減

EV化により燃料代が不要となり、整備項目も減るため、長期的な維持費が抑えられる利点もあります。

メリット項目内容
初期費用の抑制車両購入費が抑えられ、中小企業にも導入しやすい
環境対策廃棄削減、CO₂排出ゼロによる持続可能な運送の実現
ランニングコストの削減電気代は軽油に比べて安価で、故障リスクも低減可能

EV改造の課題と注意点

1. 技術基盤と認証制度の未整備

改造車の安全性や性能を保証する制度や標準が未整備なため、現時点では整備会社に依存する部分が大きく、認証の取得にも時間がかかる場合があります。

2. 保証・保険対応の課題

改造車はメーカー保証の対象外になる場合が多く、保険会社によっては補償内容が限定されるケースもあります。

3. パワー不足や航続距離の課題

特に大型トラックでは、バッテリーの重量や容量の制約により、走行性能がディーゼル車に劣る可能性もあります。

課題項目内容
安全認証の不明確性公的な認定制度が確立していないため、導入ハードルが高い可能性がある
維持・補償の不安定さ保険や部品供給が安定しないケースがあり、運用リスクが存在する
航続距離の限界バッテリー容量に制限があり、長距離運用にはまだ不向きな点もある

EV改造トラックの普及状況と実例

日本国内でも、EV改造を試験導入する物流企業が増えつつあります。2024年時点では本格的な普及段階には達していませんが、試験運用やプロトタイプの開発が進められています。

地域・企業導入状況
東京都内某運送会社中型車両2台をEV化し、都内配送に活用
北海道の農業団体古いディーゼル車を改造し、地域内物流で運用中
民間整備工場自社でEV改造キットを製造・販売、企業との共同開発を進行中

全国的な普及には時間を要しますが、地方を中心に着実に導入実績が広がっている点が特徴です。


今後の展望と導入時のポイント

EV改造トラックの普及には、以下のような課題解決と制度設計が必要です。

項目内容
制度整備技術基準、安全認証、補助制度の明確化が求められる
補助金・助成制度地方自治体や国による支援策の拡充が普及促進につながる
インフラ環境充電設備の整備とメンテナンス体制の確保が不可欠

また、導入を検討する企業は、まず「配送距離が短く」「拠点での充電が可能」なルートから小規模に試験導入を始めるのが現実的です。


まとめ

ディーゼルトラックのEV改造は、環境対応とコスト削減の両面で期待される新たな選択肢です。普及にはまだ制度面やインフラ面での課題が残されていますが、中小企業にとっても導入しやすい取り組みとして注目されています。今後の政策支援や技術進化により、EV改造の導入ハードルは下がっていくことが予想され、持続可能な物流の一助となる可能性が高まっています。

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