物流業界のトラックドライバーは減少している?その背景は?

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監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

ネット通販の急増や物流量の増加により、トラックドライバーの重要性はますます高まっています。しかし、その一方で「ドライバー不足」は深刻化の一途をたどっています。なぜトラックドライバーは減少しているのか?その背景にある社会的・経済的要因とは?本記事では、物流業界におけるドライバー不足の現状と原因、今後の対応策まで詳しく解説します。

トラックドライバーは本当に減少しているのか?

実際にトラックドライバーの人口は年々減少しています。特に中長距離輸送や大型車両運転者の確保が困難になっています。

年度トラックドライバー数(概算)備考
2015年約82万人比較的安定期
2020年約76万人少子高齢化の影響が顕在化
2023年約70万人前後(推定)働き方改革や高齢化で加速的に減少中

一方で、EC市場の成長や高頻度配送の需要は増加しており、供給と需要のバランスが崩れています。


トラックドライバーが減少している背景

ドライバー不足の背景には、複数の構造的な要因が複雑に絡んでいます。

要因内容
少子高齢化若年層の業界離れと高齢化による退職者増加
労働環境の厳しさ長時間労働、休日の少なさ、低賃金
働き方改革関連法の影響時間外労働の制限が物流の対応力に影響
資格取得のハードル中型・大型免許の取得に高いコストと期間が必要
都市部の交通事情渋滞や駐車問題がストレスとコスト要因に

これらの要素が積み重なり、「なり手不足」と「定着難」を同時に引き起こしています。


特に影響を受けているのは中長距離輸送

ドライバー減少の影響は、すべての配送に及んでいますが、特に顕著なのが中長距離トラック輸送です。

輸送距離現状
地場配送(近距離)比較的安定、若手や軽貨物で代替が可能
中距離輸送拘束時間が長く、就業敬遠されがち
長距離輸送宿泊を伴うため生活の負担が大きい。若手離れが加速中

高速道路の料金やガソリン代高騰も追い打ちをかけており、今後の物流網維持にも影響が懸念されます。


ドライバー不足が引き起こす影響

ドライバー減少は、物流業界のみならず、社会全体にも大きな影響を及ぼしています。

影響範囲具体的な影響
配送遅延商品の到着が遅れ、消費者の不満が増加
コスト上昇配送単価の上昇により、価格転嫁が進む
地域格差過疎地や遠隔地での配達困難が深刻に
サプライチェーンの不安定化製造業・流通業への影響が波及

物流は社会の血流であり、ドライバー不足はその循環に直接的な支障を与えています。


今後に向けた改善策と期待される取り組み

ドライバー減少を食い止めるため、官民ともにさまざまな施策が動き出しています。

対策内容
労働環境の改善適正な労働時間、休憩・休日の確保
賃金・待遇の見直し長距離手当・深夜手当の強化
女性や若年層の採用促進働きやすい車両設備、教育体制の整備
自動運転・配送ロボット長期的には省人化・効率化を実現する技術開発
地域配送網の分散化小型配送やマイクロハブの導入による効率化

物流の持続可能性を守るには、制度・テクノロジー・人材の3つの観点からの改革が必要です。


まとめ

物流業界のトラックドライバーは確かに減少しています。そしてその背景には、社会全体の構造的な課題が横たわっています。しかし、配送が途絶えることは社会活動そのものが滞ることを意味します。今後の物流の未来を守るためにも、ドライバーの地位や働き方を見直すとともに、私たち一人ひとりが「物流を支える意識」を持つことが求められています。

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