EVトラックの普及率は悪い?その理由と今後について解説

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監修者・竹村 直浩

会計事務所での経験を基にキャリアを開始。
約30年間にわたり、データベースマーケティング、金融、起業、BPO業務、新規事業立案に従事。
資金調達や財務管理にも精通し、現在は自ら代表を務める会社を経営しながら、経営管理や新規事業立案の業務委託も請け負う。

脱炭素社会の実現に向けて注目されるEVトラック(電動トラック)ですが、乗用車に比べて普及が進んでいないのが現状です。なぜEVトラックは普及しにくいのでしょうか?本記事では、その理由を明らかにするとともに、今後の展望や業界の課題についてわかりやすく解説します。

EVトラックの現状と普及率

普及率の実態

EV乗用車の販売比率が年々増加する一方で、商用車、特にトラック部門ではEVの普及は依然として限定的です。日本国内で登録されているトラック全体に占めるEVトラックの割合は、現時点で1%未満とされています。

項目内容
乗用車EV普及率約3〜4%(年々上昇)
トラックEV普及率1%未満(2024年時点)
トラック市場の構成小型:70%、中型:20%、大型:10%
主なEV導入業種宅配業、小口配送業など

このように、EVトラックは依然として一部の業種や実証実験レベルに留まっているのが現状です。


EVトラックの普及が進まない理由

1. 車両価格が高額

EVトラックはバッテリー搭載量が多いため、車両価格がディーゼルトラックに比べて高く、初期投資の負担が大きくなります。補助金を活用してもなお、経済的なハードルは高いといえます。

2. 走行距離の制限

満充電での航続距離が短く、長距離輸送には不向きです。特に大型トラックではこの制限が顕著で、日常的な運行に支障をきたす可能性があります。

3. 充電インフラの未整備

商用車用の急速充電器が不足しており、長時間の充電待機や出力不足といった課題が解消されていません。拠点ごとの充電設備整備が不可欠です。

4. 積載能力と車両重量のバランス

バッテリーの重量がかさむため、積載量が減少する傾向があります。これにより物流効率が下がり、業務の実用性に影響を及ぼします。

課題項目内容
初期コストバッテリー価格が高く、購入費用が重い
航続距離小型EVで150〜200km、中型以上ではさらに短い
充電インフラ商用車向けの設備が不足しており、拠点整備が必要
積載制限バッテリー重量により積載量が減少する

政策と企業の取り組み

政府の補助金・支援制度

日本政府は脱炭素政策の一環として、EVトラック導入に対する補助金や税制優遇措置を実施しています。国交省や経産省の制度により、車両価格の一部が補助される仕組みです。

企業による導入事例

大手物流企業や宅配業者では、環境負荷の低減を目的としてEVトラックの導入が進んでいます。特に市街地配送や決まったルートでの利用には適しており、実証運行を通じた検証も進められています。


今後の普及に向けた課題と期待

技術革新による改善

バッテリーの高性能化や軽量化が進めば、航続距離や積載量の課題が大きく改善されると期待されています。特に全固体電池の開発は、商用車EVのゲームチェンジャーになる可能性があります。

インフラ整備の加速

全国の物流拠点や高速道路SA・PAへの商用車対応の充電設備の整備が進むことで、長距離運行にも対応できる環境が整っていくでしょう。

業界間の連携

物流業界全体でEVトラックの運用モデルを共有・標準化することで、個社単位でのリスクやコスト負担が軽減され、普及の後押しとなります。


EVトラックの活用に適したシーン

利用シーン内容
市街地での配送業務短距離・ルート固定型の配達業務で最大の効果を発揮
自社敷地内での構内輸送充電環境を整備しやすく、稼働パターンが一定
夜間・早朝の業務騒音が少なく、近隣への配慮が必要な業務に適している

まとめ

EVトラックの普及はまだ途上段階にありますが、環境への配慮や技術の進化によって今後の成長が期待される分野です。現状の課題は多いものの、政策的支援やインフラ整備、業界全体の意識改革が進めば、より多くの企業にとって現実的な選択肢となるでしょう。中長期的に見れば、EVトラックは物流業界の新たなスタンダードとなる可能性を秘めています。

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