距離を運転するトラックドライバーは、座りっぱなしの姿勢が続くため、エコノミー症候群のリスクが高まります。命に関わることもあるこの症状は、実は運転中にも発症することがあります。本記事では、エコノミー症候群の原因、症状、トラックドライバーに特有のリスク、そして予防策までを詳しく解説します。
エコノミー症候群とは?
症状の概要と正式名称
エコノミー症候群は、医学的には「深部静脈血栓症(DVT)」や「肺血栓塞栓症(PTE)」と呼ばれる病気で、長時間同じ姿勢で座り続けることにより、足の静脈に血栓(血の塊)ができることで発症します。この血栓が肺まで流れて血管を塞ぐと、呼吸困難や胸痛を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあります。
元々は航空機のエコノミークラスの狭い座席で発症することが多かったことからこの名がつきましたが、現在ではトラック運転手を含め、あらゆる「長時間同じ姿勢で過ごす職種」にリスクがあることが知られています。
トラックドライバーがエコノミー症候群になりやすい理由
要因 | 説明 |
---|---|
長時間同じ姿勢 | 数時間にわたって座りっぱなしの姿勢を続ける |
水分不足 | 運転中に水分摂取を控えがちで、血液がドロドロになる |
トイレを我慢する習慣 | 尿意を我慢して休憩を減らすことで、体液バランスが崩れる |
運動不足 | 車内での活動量が極端に少なく、下肢の血流が滞りやすい |
高齢化と基礎疾患 | 高血圧・糖尿病などがあると、血栓ができやすくなる |
とくに長距離ドライバーは1日に何時間も運転を続け、場合によっては10時間以上座ったままというケースもあります。車内での移動や足のストレッチが少なくなることで、下肢の静脈に血液が滞りやすくなります。
エコノミー症候群の主な症状
初期症状(足の異常)
- ふくらはぎの腫れや痛み
- 脚のむくみ
- 足の皮膚の温度が下がる、または赤くなる
- 押すと痛みを感じる「圧痛」
進行後の症状(肺への移動)
- 呼吸困難
- 胸の痛み
- 動悸
- 意識が朦朧とする
- 突然の失神
肺に血栓が移動すると「肺塞栓症」となり、緊急搬送が必要になります。発症してからの対処が遅れると、命にかかわる非常に危険な状態になるため、早期の予防が重要です。
エコノミー症候群を防ぐための予防策
定期的な休憩とストレッチ
2時間に1回は車から降り、軽く歩く・ふくらはぎを伸ばす・膝を曲げ伸ばしするなどのストレッチを行いましょう。運転席でも座ったままできる足首の上下運動や膝の屈伸も効果的です。
水分補給を意識的に行う
トイレを我慢するために水分摂取を控えるのは逆効果です。体内の水分が不足すると血液が濃くなり、血栓ができやすくなります。目安として、1日1.5~2リットルの水をこまめに摂取するよう心がけましょう。
弾性ストッキングの活用
医療用の弾性ストッキング(着圧ソックス)を使用することで、足の静脈に圧力をかけて血流を促進し、血栓ができにくくなります。長距離運転時に履くことで、予防効果が高まります。
禁煙・減塩などの生活習慣改善
タバコは血管を収縮させ、血液の循環を悪化させる要因です。また、塩分の過剰摂取もむくみの原因となり、エコノミー症候群のリスクを高めます。バランスの取れた食生活と禁煙に取り組むことが予防につながります。
予防法 | 実施内容 |
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休憩と運動 | 2時間に1回は停車し、足を動かす運動をする |
水分補給 | トイレを恐れず、1~2時間ごとに少量ずつ水を飲む |
弾性ストッキングの使用 | 医療用の圧力ソックスを着用し、血流をサポートする |
食生活の見直し | 減塩・禁煙・脂質控えめの食事を心がける |
万が一のときのために知っておきたい応急処置
- 足の腫れや痛みを感じたらすぐに休憩を取り、足を高く上げる
- 呼吸が苦しい・胸が痛むなどの症状が出たらすぐに119番通報
- 医療機関では、血液検査やCT検査によって診断が行われる
- 早期発見であれば、抗血栓薬の投与などで回復が期待できる
自己判断で無理をすると症状が急激に悪化する場合があるため、「いつもと違う」と感じたら早めに医療機関を受診することが大切です。
トラックドライバー向け健康管理の習慣化がカギ
エコノミー症候群に限らず、長時間運転を伴う仕事には、体への負担が多くあります。特に高齢ドライバーや生活習慣病を抱えている方は、日々の体調変化に敏感になる必要があります。
- 朝・昼・夕の3食をしっかり摂る
- 適切な睡眠と休憩を確保する
- 定期的に健康診断を受ける
- 血圧・血糖・体重を日常的に管理する
こうした小さな習慣の積み重ねが、病気の予防と安全運転の継続につながります。
まとめ
エコノミー症候群は、トラックドライバーにとって決して他人事ではありません。命に関わるこの症状は、「座り続ける」という業務特性によって、他業種よりも発症リスクが高まります。
定期的な休憩、水分補給、ストレッチ、健康的な生活習慣を意識することが、最大の予防策です。体調管理も仕事の一部と捉え、日頃から予防に取り組むことで、安全で長く働き続けることができる職場環境が実現します。
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