トラックドライバーにとって、荷物の積み降ろしの待機時間、いわゆる「荷待ち時間」は、業務の中でも大きな負担の一つです。運転以外の時間として軽視されがちですが、長時間の荷待ちは健康リスクや拘束時間の増加につながり、業界の人手不足にも影響しています。この記事では、荷待ち時間の実態や勤務時間への扱い、問題点と改善の動きまで詳しく解説します。ドライバーの労働環境改善のヒントとして、ぜひご覧ください。
荷待ち時間とは?定義と現場での実情
荷待ち時間とは、トラックドライバーが配送先や積み込み先で「荷物の積み降ろしを待っている時間」を指します。この時間には、以下のような場面が含まれます。
- 倉庫や工場に到着してから荷積みが始まるまでの待機
- 荷降ろし作業の順番待ち
- 相手先の事務処理や検品が終わるまでの待機
この時間は、ドライバーにとって休憩時間ではなく、事実上拘束された状態であるにもかかわらず、報酬が発生しないケースも多く見られます。
荷待ち時間は勤務時間に含まれる?
法律上、荷待ち時間が「労働時間」に該当するかどうかは、その間の拘束状況によって判断されます。
原則的な考え方
- 拘束されており、自由に過ごせない場合
→ 労働時間に含まれる(賃金の対象) - 自由に離席できる状況や完全な休憩である場合
→ 労働時間に含まれない(休憩時間扱い)
つまり、トラックから離れられず、呼び出しに応じる必要があるような待機時間は、勤務時間としてカウントされるべきものです。しかし実態としては「休憩」扱いされていることも多く、トラブルの原因となっています。
荷待ち時間が問題視される理由
1. 長時間労働の温床
荷待ち時間が勤務時間として正しく扱われないと、1日の労働時間が実際より短く見積もられてしまい、過重労働の実態が隠れてしまいます。これにより、長時間労働や健康障害のリスクが高まります。
2. 賃金が発生しないケースが多い
勤務扱いとされない荷待ち時間には賃金が支払われず、ドライバー側のモチベーション低下や不満の原因になっています。とくに中小運送業者では、顕著な問題となっています。
3. 配送スケジュールの遅延リスク
荷待ちの時間が予測できない場合、次の配送に支障が出ることもあります。ドライバーだけでなく、運行管理者や荷主企業にも影響を及ぼします。
荷待ち時間が発生しやすい場面
以下のようなケースでは、荷待ち時間が長くなりやすい傾向があります。
発生場面 | 問題点 |
---|---|
倉庫の出荷待ち | 他社トラックとのバッティング、入出庫処理の遅れが原因 |
小売店・量販店での納品 | 店舗都合の受け入れ体制の不足、時間指定の集中 |
工場での荷積み | 製品準備の遅れ、フォークリフト作業の人員不足などが影響 |
港湾・空港エリア | セキュリティ確認や書類処理の時間が長くかかるケースが多い |
これらはすべて、ドライバーの裁量外であるにもかかわらず、労働時間としてカウントされないことがしばしばあります。
荷待ち時間に関する法的な扱いと指針
国土交通省と厚生労働省は、トラック運送業における労働時間の適正管理についてガイドラインを公表しています。その中では、荷待ち時間を含む「拘束時間」の管理が重要であるとされています。
また、2024年から「働き方改革関連法」に基づき、トラックドライバーにも時間外労働の上限が適用されるようになり、拘束時間や荷待ち時間の見直しは急務とされています。
荷待ち時間を削減するための取り組み
企業や荷主の協力により、荷待ち時間の削減を目指す動きが全国的に進んでいます。
荷主企業との連携強化
- 予約制の導入(トラック受付時間をあらかじめ調整)
- 出荷体制の見直しによる待機時間の短縮
- 到着予定の事前通知システムの導入
運送会社の工夫
- 複数案件の配送ルート最適化
- ドライバーからの現場情報のフィードバック
- 余裕のあるスケジューリングによる遅延防止
行政の支援
国土交通省が提供する「ホワイト物流」推進運動では、荷待ち時間の見える化や、デジタルツールを活用した管理の徹底が提案されています。
トラックドライバー自身ができる対策
荷待ち時間のすべてをドライバーがコントロールできるわけではありませんが、以下のような工夫が自衛策となります。
- 荷主・荷受け先に状況を明確に報告する
- スマートフォンで待機時間を有効活用(教育動画の視聴や仮眠)
- 待機記録を残しておく(勤務時間交渉の証拠として有効)
また、勤務時間の管理に疑問がある場合は、労基署や労働組合に相談することも選択肢です。
まとめ
荷待ち時間は、トラックドライバーの業務において見過ごされがちな負担ですが、勤務時間としての扱い、報酬の支払い、健康への配慮など、重要な問題を内包しています。
- 荷待ち時間は、拘束状態にあれば勤務時間に該当する
- 実態としては未払い・無管理のケースが多い
- 荷主・運送会社・ドライバーの三者協力での改善が求められる
- 国のガイドラインや法改正も追い風になっている
働きやすい運送業界を目指すには、「運転以外の業務」への適切な評価が欠かせません。荷待ち時間の見直しは、ドライバーの労働環境改善と業界の持続可能性を高める第一歩といえるでしょう。
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